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未完成

最終更新: 2019年11月4日


「未知の可能性」

「衝動だけで成り立っている」

「楽しむことへのハードルの低さ」

「夢のあるものが好きです」


未完成店主 北浦 氏より


2017年10月3日 インタビュー ライター:Mana



古着屋、喫茶店、雑貨屋、ライブハウス、劇団。アングラな匂いを感じさせるカルチャーが犇めく街「高円寺」は、生活感と文化が飽和されていて、サブカル界隈を語る上で中央線はメッカのような街がいくつも存在しているが、中でも独特な存在感を示している街なのではないか。

バンドマンや劇団員など、夢を追う若者もいれば、商店街には八百屋や魚屋などもあり、ふと下町人情をも感じさせたりする。駅周辺以外は閑静な住宅街であることも高円寺が一人暮らしに人気の理由の一つなのだろう。

高円寺の地名は地内にある曹洞宗の「宿鳳山高円寺」から由来している、江戸時代初期まで高円寺は「小沢村」と呼ばれていたそうだが、徳川家光が当寺の名から改称したとされている?また、多くの作品の舞台として登場することも多く、ドラマ「流星の絆」「ゆとりですがなにか」映画「アイデン&ティティ」「少年メリケンサック」など、他にも数多くの作品がある。これは作家や監督をはじめとする、かつてのサブカルキッズたちの青春時代が高円寺には詰まっているからなのだろう。

高円寺と聞くと「阿波踊り」を連想する方も多いのではないか。高円寺の阿波踊りが誕生したのは昭和32年、今のパル商店街の前身である「高南商盛会」の青年部が発案したものである。当時は阿波踊りではなく「高円寺ばか踊り」という名であったが、歳を追うごとに成熟して今の祭りの形になり、今や東京の夏祭りの中でも名を轟かす存在になったのだ。そんな高円寺にはユニークな店が数多くある。

今回はその中から、高円寺駅北口から徒歩7分、「北中通り商店街」に門を構える雑貨屋「未完成」に取材をしてきた。北中通り商店街は杉並一小さい商店街で、そこには各店舗の店主たちの個性、或いは思想が張り巡らされたような店が軒を連ねている。毎月第三日曜には「北中夜市」というフリーマーケットも開催されていて、毎回賑わいを見せているアットホームな商店街だ。そんな北中商店街を進んでいくと、極彩色で彩られた多国籍な空間が出現する。そこが未完成だ。



何とも手作り感の溢れる外観は、異質でありながら、どこか懐かしさをも感じさせる。例えるなら駄菓子屋のような雰囲気ではないか。入り口にはアパレルアイテムも数多く揃っている。流石は古着の街高円寺、雑貨屋ながら全身のコーディネートも揃うだろう。



店内は店主の「北浦楓子」さんが古今東西に渡り月に1回100kg以上もの買い付けで得た不思議で愛らしい雑貨がぎっしりと並んでいて、どれもポップな色彩とシュールな印象を抱かせる。 是非お店に訪れた際には一つ一つ手にとって味わって欲しい。



日用品であるシャワーヘッドまで未完成の雑貨の一部となると、こんなにもユーモラスになる。ベンツマークのシャワーヘッドやアップル社のロゴ、バスタイムまで楽しい雑貨で彩ることが出来るだろう。



店の入り口に掛かっているキャップは、ソーラーパネルが付いており、日中であれば太陽エネルギーでこのプロペラが回るらしい。一体どのタイミングで被るのか、、なんて考えは野暮だろう。視覚的に楽しむことこそがこの帽子の正しい使い方だ。



大量の蛇口が何故雑貨屋にあるのか、、?答えはこれは蛇口でなくライターだ。蛇口ライターの他にも未完成には数多くの喫煙具が揃えられている。喫煙所や飲み会などでも目を引くことは間違いない。



一見ただのおもちゃのようにも見えるが、これは未完成の売れ筋商品「お月見ライト」北浦さん曰く、中国ではお月見で原色のおもちゃの提灯をぶら下げる風習があるそう。中国のお月見はクレイジーで、我々日本のお月見に対するイメージとはかけ離れたものらしく、ピカチュウに酷似したキャラクターの提灯のボタンを押すと、サイケデリックな輝きを放ってダンスミュージックが流れ出す。



店内で最も存在感を放つのは巨大なメリーゴーランドは「石田真也」さんによって作られたもので、店に入ってすぐ右側にある廃材で作られた祭壇も彼によるものだそう。北浦さんの話によると、石田さんは各国各地のその土地で回収した廃材のみで祭壇を造ることから、自然とその土地の神のような姿になるのだということ。石田さんと北浦さんの出会いは、石田さんが廃材で造られたお神輿を引きずって高円寺を歩いた際にたまたま未完成に脚を運んだことがきっかけで、未完成にて石田さんが展示をすることになり、親交を深めて店内のメリーゴーランドを作成依頼したのだそう。




店内外装や店内の壁の塗装なども北浦さんやスタッフのDIYによるもので、取材時もまさに「未完成」という名の如く、店内の塗装や棚を付けている作業の真っ只中であった。

インタビュー 未完成店主 北浦 氏


「未知の可能性」

北浦さんは朗らかな少女のような雰囲気を持ち、店名である未完成の由来を尋ねるとはんなりとした京都弁で未完成誕生秘話と併せて答えて下さった。

未完成が誕生したのは我々の記憶にも新しい東日本大震災後だ。震災前は「シランプリ」という名の古着屋がここにはあったのだそう。シランプリの店主であった「山下陽光」さんは震災を気に店を畳むことを決め、その時丁度北浦さんも雑貨屋をやりたいと考えていたことにより、山下さんから店を譲られる形で未完成は産まれた。

流石は高円寺、山下さんが店を畳む事を決めた際には多くのテナント希望者が殺到したそう。中には既に店を持っている人からの応募もあったのだが、山下さんは「未知の可能性」を持つ人に店を譲りたいと考えていたそうで、当時、何をするか分からない新進気鋭の若手であった北浦さんが後継者として選ばれたのだ。店名の未完成の由来については、シランプリ時代の歴史とドラマティックなストーリーが関係している。

店内の壁に貼ってあるガムテープの「未完成」という文字は単なる店名を貼ったものではない。このガムテープの文字は未完成が出来る前、つまり山下さんがお店をやっていた時代から存在していた。この文字を残すことがお店を譲渡する条件だったらしく、山下さんが「佐藤修悦」さんに依頼して書いて貰ったものだそう。驚くことに、佐藤さんは三和警備保障株式会社に勤務する警備員さんなのだ。JR新宿東口の部分改築工事の際に声だけの誘導だけでは対応仕切れないことから、迷路のような状況を打破する為、ガムテープの案内表示を開始した。新宿駅でこの案内表示のガムテープの文字を見た山下さんは一体誰によって書かれたものなのか追跡していくと、佐藤さんに辿り着いたとのこと。

何故山下さんは未完成という言葉を選んだのかと北浦さんに尋ねると、とくに北浦さん自身が由来を尋ねた訳でもなく、正確な理由を知らぬままでも北浦さんはシランプリ時代から店に残されたガムテープの未完成という言葉を気に入ってそのまま店名にしたそう。未完成という言葉は、北浦さんの方針である雑貨屋だからこそ「何でもやっていい」が具現化されているようにも感じられた。



「衝動だけで成り立っている」

自分が面白いなと感じた雑貨を直感と衝動でセレクトしているから、コンセプトを持たないことこそがコンセプトなのではないかと北浦さんは言う。雑貨屋の「雑」は北浦さんにとって制限の無い「なんでもやっていい」の精神、衝動で成り立っているのだと答えて下さった時、北浦さんのマインドはこの言葉に詰まっているのではないかと感じた。

買い付け先の国も北浦さん自身のその時の気分や、たまたまチケットが安かったからという理由で決めているらしく、ガイドなども付けず、気の向くままに散策して見つけ出すのだという。上海、香港、広州はよく行く買い付け先だそうで、中国本土に限らず、タイのチャイナタウンやフィリピンのチャイナタウンなど、色んな国に行っても最終的にはチャイナタウンにいることが多いそう。北浦さんが面白いと感じる雑貨は大体中国のもので、あまり深く考えずとにかく作ってみようという精神が見ていて元気が貰えるそうで、雑貨屋の何でもやっていいの精神に通づるところがあるとのことだ。

「楽しむことへのハードルの低さ」

商品の価格設定が低いのも、お客さんが見たことのないものを気軽に楽しんでもらいたいという北浦さんの想いが込められているそうで、北浦さんが雑貨に興味を持ったのは物心ついてすぐのことであった。京都の田舎で育った北浦さんは、周りにあまり娯楽が無く、近所の雑貨屋に行って欲しいものを手に入れることが楽しみだったそう。殆どの人が経験しているであろう小中学生のお金も行動範囲も制限されている時代に、北浦さんにとって想像力や感受性の他に、物質として体現してくれる存在が雑貨であったのだ。幼少の頃から物を集めたり、田舎のリサイクルショップの看板を買っていたのだそうだ。

未完成を始める以前は雑貨屋の他に映画監督になることも夢の一つであったそうで、NHKのADをしていたこともあり、様々な番組のADを務めていたそうだ。未完成を始めてからもバンド「むせいらん」のメンバーとしてクラリネットを担当するなど、北浦さんの才能は多岐に渡る。「むせいらん」は「おおらかロック」とも称されるガールズバンドで、MVからは未完成の世界観も感じさせる要素が含まれている。楽曲もメンバーがそれぞれ製作しており、とくに作詞作曲の担当は固定ではないそうで、その為楽曲毎に様々な印象を抱かせる。メンバーはクラリネットの北浦さん、ベースはぬいぐるみ作家としても活躍している片岡メリヤス、ドラムは未完成に委託販売中のアサマートのアサ、キーボードはミスiD2017特別賞のひさつねあゆみ、ギターはブランド「多摩川カジュアル」社長、現在はバンド「ミンモア」の鍵盤&コーラスとして活動するあずあずの5人バンドだ。

元々期限を決めての活動であった為、2015年4月11日をもってむせいらんは「無期限活動休止」になってしまったが、メンバーの一人一人がバンド活動の他に多彩な才能を発揮し、その独自の世界観に、活動中には雑誌「装苑」に取り上げられる他、能町みね子氏のラジオに選曲されるなど、他にも数多くのアーティストがライブに足を運んでいたのだとか。むせいらん休止後も、北浦さんだけでなくメンバーそれぞれがクリエイティブな活動を行なっている。

ちなみに北浦さん自身は細野晴臣のソロ名義のアコースティックな楽曲や、「アルカシルカ」という沖縄と東京を拠点に活動しているスラッシュフォークバンドが好きなのだそう。

むせいらん 四匹


細野晴臣 泰安洋行


アルカシルカ 罪と罰と


「夢のあるものが好きです」

私は最後の質問に、北浦さんにとって「かわいいもの」とは何か、と尋ねた。透明のもの、宇宙、祭壇、古い遊園地、ネオン街、どれも一貫性がないようで、全て未完成を表すようなキーワードのように感じた。それは、幻想的な光景で、私が高校生の時に初めて北中商店街を歩いている時に未完成を発見したときに感じたイメージに近いように思わせる。そして北浦さんは少し悩んでから、「夢のあるもの」が好きだと答えて下さった。

学生時代に北浦さんが夢中になった雑貨たちが手頃な夢であったように、未完成で北浦さんは手の届くような夢やわくわくするものを表現しているのではないのだろうか。二年前、原宿で若者の心を掴み続けていた「文化屋雑貨店」が40年の歴史に幕を閉じ、2017年いっぱいで大手雑貨チェーン「SWIMMER」が全店舗の営業を終了するアナウンスが流れてきたのも記憶に新しく、雑貨は必ずしも生活に必要なものではなく、身近にあると愛おしい存在、または少しだけ幸せな気持ちになるものであり、そういった小さな幸せの存在こそが人の心を豊かにする大切なものだったりするのではないであろうか。

未完成にはそんな心を豊かにする、今までに見たことのないようなワクワクする雑貨たちが沢山ある。高円寺を訪れた際には北浦さんに導かれた愛らしい雑貨たちに出会いに足を運んでみてはいかがだろうか。

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