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Strange Love / M

最終更新: 2019年11月4日


「いい人の集団ですね。紳士の集団。というかそもそも、僕は結社だとすら思ってない」

「いじわるなんだよね、僕」

「いろいろ複雑なんだよね」

「ナカとソトには、ギャップがあるよ」

「普通の袋と、恥ずかしい袋、どっちがいいですか?」


Strange Love店主 廣瀬剛 氏


2018年7月20日

ライター:Jo


互い違いに重なったコンパスと定規。どこか六芒星を思わせるフォルムの中心に刻まれた、アルファベットの「G」。誰もが陰謀論やテロ、都市伝説を連想するそのロゴ。フリーメイソン。あるいは、フリーメイスン。


フリーメイソン(英:Freemasonry)は、16世紀後半から17世紀初頭に、判然としない起源から起きた友愛結社。

現在多様な形で全世界に存在し、その会員数は600万人を超え、うち15万人はスコットランド・グランドロッジならびにアイルランド・グランドロッジの管区下に、25万人は英連邦グランドロッジに、200万人は米国のグランドロッジに所属している。


誰もが、その平坦なWikipediaの説明以上の何かを期待する、噂の絶えない「友愛結社」。ミステリアスな顔をして、港区のど真ん中に集会所を設ける「秘密結社」。


そんな謎が謎を呼ぶ存在であるフリーメイソンの「グッズ」の専門ショップがあると耳にした我々は、早速東京都は江東区のショッピングモール、「ヴィーナスフォート」へと足を伸ばしていた。


店の名前は「Strange Love」。……という雑貨店の中の「M」という店。世にも珍しい、同一の店主が経営する「ショップ・イン・ショップ」だ。


東京湾を一望できるモノレール「ゆりかもめ」、に揺られ、青海駅で下車。都会的な景観の中に微かに香る潮風がハーバーシティの風情を感じさせる。


駅からほぼ徒歩0分といって差し支えない距離にヴィーナスフォートの入り口はある。このモール、良く言えば非日常的、悪く言えば西洋かぶれの内装だ。しかしかぶれといえどもその内装の完成度は凄まじく、お台場のデートスポットのド定番の看板を常にはっている。エスカレーターを降り、まっすぐに「Strange Love」へと向かう。


しばらく歩くと、カップルや親子連れで賑わう構内に人気のない静かな一角が見つかる。静かなだけでない。その一角を鹿が見下ろしている。



見渡す限りの剥製、剥製、剥製。本物かどうかはさておき、この時点で「危険な香り」が辺り一面に立ち込めている。もちろんいい意味でだ。巷にあふれる量産系な雑貨屋には出せない「スタイル」が滲み出している。そして鉄格子には、見慣れたあのときめくマークが。



取材の旨を伝え、中へ入れてもらう。

こちらは「Strange Love」。フリーメイソングッズ専門店でない方。ところ狭しと奇妙かつ重厚な雑貨・置物が並べられていて、まるで絵本や児童文学の世界に出てくる魔女の家のようだ。そんな魔女の家といえども貨幣経済は適用されており、値札がしっかり貼ってある。学生にも手が届くようなものから、思わず目を丸くしてしまうものまで、そのプライスの幅はとても広い。



ヤバさを感じる。



狂気のようで整然と、また調和しているようで違和感を感じさせる商品展開。奥へ進めば進むほど懐の広さを感じさせる。その先に待ち受けているこの記事でいうところの本編……フリーメイソンショップ「M」への期待も指数関数的に高まっていく。



そして調度品の波を掻き分けた末についに現れた「M」!!

まずお出迎えしてくれたのは、ショーケースに埋め込まれた大量の指輪。もちろんただの指輪ではない。ひとつひとつに彫り込まれた定規とコンパスの「例のマーク」が、あたかもここは普通のアクセサリーショップではないと一線を引いているようだ。

そんなコレクションを保持するは、「M」および「Strange Love」店主の廣瀬さん。

職業で例えるのならトレジャーハンターのような外見をしている。物腰は穏やかでだが、店の内装に負けないどころか全てを圧倒してしまうほどの存在感を放っていた。


ショーケースを挟んで向かい合って座る。フリーメイソンは「メイソン」か「メイスン」のどちらに統一した方が良いかを確認してから、インタビューが始まった。「正直どっちでもいいよ」とのことなので、この記事では「メイソン」で統一する。


まず手始めに、廣瀬氏の「フリーメイソン観」についてお聞きした。

「結局のところ、様々な噂や憶測が飛び交う、フリーメイソンってなんなんだ?」ということを。廣瀬氏の返答はこうだった。


「いい人の集団ですね。紳士の集団。というかそもそも、僕は結社だとすら思ってない」


正直、拍子抜けという感想を否定できなかった。会員との交流も盛んに行っていて、「ロッジ」と呼ばれるフリーメイソン会員の集会所にもしょっちゅう顔を出しているという彼の言うことだから、きっとこれはポーズではないのだろう。ぶっちゃけ、政府と結託して人工地震を起こしているだの、悪魔崇拝の儀式を行っているだの、めくるめく都市伝説の世界を耳にできるのではないかと少しワクワクしていた。だがしかし、現実は単純に「いい人集団」。それもまた、そうなのだろう。だってそもそものこの団体の名目は「友愛結社」なのだから。


だがしかし。そう簡単に「謎」「怖い」「友愛」といった具合にイメージを画定してしまうような言葉を与えることのできる単純な団体ではないことも、インタビューを通して知ることになる。インタビューが終わった後は、フリーメイソンという団体のイメージはまた霧の中へと包まれた。いや、やっぱ、裏で何かやってるのではないか?いやでもまて、紳士達の壮大なお遊びなのではないか?濃霧が思考の着地点を隠す。そしてその霧の主要な発生源は、廣瀬氏の飄々とした雰囲気だ。僕らは最初から最後まで、もったいぶるようでもったいぶらない、意味のあるようで意味のない……いや本当は意味のあるかもしれない、彼の受け答えに翻弄され続けた。

それはそうとして、まずは彼の少年時代の話から。

世界中からフリーメイソン・フリークが押し寄せるという彼の店。ここまでの規模のものを作り上げた原体験は一体何なのか。


「どうせなら世界一になってやろうと思ったから」


廣瀬少年のフリーメイソンとの出会いは彼の20代の頃まで遡る。当時、彼は特に行くあてもなく下北沢界隈で海外の小物の販売をしていた。そして何回目かの渡米の際に、現地の雑貨屋にて光り輝くフリーメイソンのロゴ入りの指輪と時計を見つけたことが彼にとってのファーストコンタクト。「何だこのかっけえのは!」彼は出会いのエピソードをそう結ぶ。まだまだ日本は辺境の島国、インターネットなんて夢のまた夢の時代。情報は限られたメディアからごく狭い範囲からしか入ってこない。店員に詳細を聞いてみると「秘密結社だよ」との返事が。

秘密結社。「人と同じなのが好きじゃない」という信念を持っている多感な彼はその瞬間から一気にその蠱惑的な響きに取り憑かれてしまったのである。




これがそのときの指輪と腕時計。なんだかんだで出会いのきっかけになった物をいつまでも大事に持っているのは、素晴らしい。


彼は「フリーメイソングッズ」を自身の「戦場」にすることにした。

たとえば、「戦場」が切手やGIジョーの収集では、勝つのは難しいかもしれない。が、「フリーメイソングッズ」なら……今でいうところのブルーオーシャンだ。彼はこの分野で世界一を目指す決意をした。

そう、どうせなら、世界一だ。人と違う分野で。


ところで話を現代に戻すと、ここヴィーナスフォートは日本有数の好立地&オシャレモール。それゆえテナント料も思わず目を丸くしてしまう価格設定だろう。どうしてわざわざここを選んだのだろうか。下北沢に留まり続ける選択肢もあったはずだが。


「立地がどうだとかは、一切考えていない」


潔すぎる。

立地などは実際、まったく関係ないのだろう。ここヴィーナスフォートに出店した理由も「森ビルに知り合いがいた」からである。思えばここは専門でやっている中では世界一のフリーメイソングッズショップである。彼に言わせてみれば、「場所がどこであろうと、来る奴は来るんだよ」とのことだ。さすがに貫禄がある。そう、たとえ店のロケーションが軽井沢の山奥でも宗谷岬でも沖ノ鳥島でも、人はやってくるのだろう。フリーメイソンの神秘のベールと、世界一のコレクションがそこにある限り。


ところで、一般の方はここ『M』に入場し、何も買わなかったのなら1,000円を払わなければならない。(ここでいう「一般の方」は会員カードを持っていない人だ。36,663円(税抜き)以上のお買い上げで発行してもらえるが、発行枚数には上限が設けてある。興味を持った方はなるべく早く預金を下ろしてお台場へ向かうのがベターだろう)「一見さんお断り」を明確にマネーの形で表出させている。ちょっと珍しいし、なんだか排他的な気もする。


「いじわるなんだよね、僕」


だが、その「1,000円システム」はとても理にかなっているシステムである。この店は廣瀬氏が数十年の月日を経て完成させた正真正銘の「血と涙の結晶」だ。そんな空間には、「へー、すげーな。で終わるような奴には来てほしくない」と彼は語る。顔では笑っていたが、確固たる意志を伺える声だった。

当然、「何も買わなかったら1,000円」のハードルを乗り越えてやって来て、晴れて会員になる人も少なくない。要するに入店試験である。

しかしその「入店試験」にまで辿り着けない人もいる。店の雰囲気が雰囲気だけに、内装をチラ見しつつ入り口のあたりをウロウロするが、結局怖気ずいて入店できない人もいるとのこと。そして廣瀬氏は、そういう人を見て「あ、あの人ビビってるな」とほくそ笑むのだそうだ。彼は「いじわる」だ。先述の1,000円システムも含め、自身のことをそう総括した。

だがウィットに富んだ「いじわる」だ。

謎のベールで我々に手をこまねくが、そう簡単には実態を見せてくれないフリーメイソンという団体そのもののあり方と通ずる部分があるのではないか。


では、そんな彼はフリーメイソン会員なのか?


「いろいろ複雑なんだよね」


結論から言うと、彼は会員ではない。

だがその理由をここに詳細に書き記すことはできない。なかなかにデリケートな問題がそこには横たわっているからだ。「会員一歩手前で踏みとどまっている」というのが現状に近いとのことである。それだけでなく、会員になる難易度は純粋にとても高い。多数の会員に何度も「信任」されなければなることはできないのだが、友愛結社といえども一枚岩ではない。たとえば廣瀬氏はフリーメイソンの文化の広報に関しては消極的だが、海外の「ロッジ」では非常に積極的に各種SNSを利用して自身の存在をアピールする所もあるという。「人の集まり」である以上、そこに差異が生じることは必然で、追って複雑な問題が生成される。これ以上の言及は避けるが。

ここで一旦テーブルを離れ、店の中を順繰りに案内してもらった。



世界一は伊達ではない。どこを見渡しても圧巻の言葉に尽きる光景が待っている。



ショーケースの中には日本の「ロッジ」のアイテムも見受けられる。皆、「廣瀬さんなら安心だ」といった具合にグッズを手放すときはここへと流してくれるそうだ。



この空間には『M』の中でもトップクラスに価値の高いのもが取り揃えられている。全て非売品である。もっとも、前までは高価すぎて買われないであろうということを前提に普通に売り場に出していたのだが、そのうち本気で買われそうになってしまい、「ヤバい」となりこのエリアを作ったそうだ。



ジョージ・ワシントン初代大統領の肖像と廣瀬氏。周囲の調度品の雰囲気も併せてまるで海賊王のようだ。将来的には、自身が所有している貴重なアイテムを展示する「フリーメイソン博物館」を作りたいそうだ。


「ナカとソトには、ギャップがあるよ」


彼はあくまでこのことを強調する。

この「ナカとソト」は会員⇄非会員のことでもあるし、お店の中身⇄外観

といったことでもある。外部からは謎多き集団とみなされているが、内情を知る人に言わせてみれば「いい人の集まり」だったり、物々しいお店かと思いきや、予想の数倍気さくで「いじわる」なお店だったり。結局のところ、臆度だろうが事実らしかろうが、最終的に判断するのは自分なのだ。


こういう騒動があった。

某大手出版社から「フリーメイソン特集」を称したムック本が発売された。内容のクオリティはともかく、問題になったのは「フリーメイソングッズを抽選でプレゼント」というコーナー。トートバッグ等のいかにもそれらしいアイテムがラインナップされていたが、これに「ロッジ」は許可を出していたのか?それに、ここまで「フリーメイソン」という団体を大っぴらにして良いものなのか?



正解はない。

これからフリーメイソンという団体がどのような道をたどるのか。より閉鎖的になるのであろうか。それとも、今よりもよっぽどオープンなものになっていくのだろうか。そして結局フリーメイソンは本当に「紳士の集まり」とだけで形容できるような組織なのか。廣瀬氏は様々な質問に気前よく答えてくれたが、「それには答えられない」と口を閉ざす場面も決して少なくはなかった。フリーメイソンという団体の未知はまだまだそこに横たわっている。

我々は完全に部外者だ。だが、いろんな答え、いろんな道があることを理解して、考えることはできる。


フリーメイソングッズのお店、そしてフリーメイソンという団体の今現在のあり方を通して、もう少し「フリー」に生きても良いのではないか、と廣瀬氏は私たちに教えてくれたのではないか。


「どうぞ勝手にやっててくださいって思いますけどね」


これは、フリーメイソンが都市伝説とともに物々しく扱われていることをどう思っているかという質問に対する廣瀬氏の返答だ。


フリーメイソン。この奇妙な団体の未来は、実はこの奇妙なおじさんの手に委ねられているのかもしれない。ひょっとしたら……



そして帰りがけ、「廣瀬氏直筆の缶バッジ」を購入して帰ろうとすると……


 「ちょっと待っててください」

 「?」

 「普通の袋と、恥ずかしい袋、どっちがいいですか?」

 「えっと、恥ずかしい袋で」

 「はい、みんなそう言いますよね。じゃあこのメニューの中から選んで」


そう言って、赤いメニュー表を取り出した。そのメニュー表には、明らかに悪ふざけで命名したであろう著名人の二つ名であろうものから、1秒で思いつきそうなギャグ、ただ単に謎のワード(私が知らないだけかもしれない)までと、本当はおもしろいはずなのに、なんか笑っていいのかいけないの分からない20種類ぐらいの項目が羅列してあった。

 

 「え、えっと、『上から9番目』で」

 「『上から9番目』ですね?わかりました」

 そして形容しがたいオリジナルキャラクター(?)を書き出す廣瀬氏

 「はい、できました。恥ずかしい袋です。辱めを受けて帰ってください」

 「これって……」

 「ほら、俺っていじわるだからさ」

 「……」


事実は記事より奇なりということで、そこで起きたことは是非、読者の皆様ご自身でお楽しみ頂きたい。



我々はえも言われぬ辱めを受けて『M』を後にした。



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東京都江東区青海1-3-15 ヴィーナスフォート2F