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悪童処(閉業)

最終更新: 2019年11月4日


「下北沢のどこに子供がいるんだよ」

「always 三丁目の夕日の茶川って俺がモデルなんだよ」

「どうせ安いものが好きなんだろ」

「まったくバカヤローしかいねぇんだから」

「悪童処は宗教」


悪童処店主 故 東九条阿洞氏より


2017年9月15日 インタビュー ライター:Wang

夜も深くなり、下北沢駅周辺は居酒屋の客で賑わっている。我々は下北沢駅を背に下北沢一番街へと足を運んだ。客足もまばらで閑散とした一番街。しっとりと夜道を照らす街灯に連れられ一本道を進んでいくと、そこにはノスタルジックな一軒の駄菓子屋があった。



しかしここで一つ疑問を抱く。それは今が夜であるということだ。真夜中の駄菓子屋。なんとも訝しい響である。まるで千尋が油屋にやって来たかのように、道ゆく人がその小さな駄菓子屋に吸い込まれていく。しかし、彼ら彼女らの眼差しは子供のような輝きを取り戻していくようだ。



入り口では冷しラムネの布看板の横で夜行灯に照らされた貝殻やイルカたちが悠々と泳いでいる。夏にはもってこいの演出である。



その後ろではショーケースの中でドラえもんとドラみが招き猫のように我々を出迎える。何かのパワースポットかと勘違いしてしまうほどの量に驚く。このショーケースは頻繁にリニューアルされるらしいので、次来る時が楽しみだ。



店先では懐かしの駄菓子が所狭しと陳列してある。ヤッターメンにココアシガレットにモロッコヨーグルなど挙げてしまえばきりがない。しかしその一つ一つの味や匂いやパッケージ、はたまたそれを仲良く食べた友達の顔までもが心に浮かぶ読者も多いはずだ。

そういえばこの怪しげな駄菓子屋の名前を紹介しそびれていた。



悪童処(ワルガキサロン)。これほど駄菓子屋にふさわしくない名前はない。これでは良い子がくるりと踵を返してしまうではないかと心配しつつ、我々はこの天邪鬼な店名がとても気に入った。それと同時に暗闇に映えるその黄色い3文字に我々もまた吸い込まれてしまった。

人一人通るのが精一杯な程狭い店内だが、足を踏み入れた途端に鋭い懐かしさを感じた。ここは気が緩むのを許してくれるような雰囲気に包まれている。 また、増田セバスチャンの世界観は小さい頃の駄菓子屋で見た数々の原色ベタ塗りのパッケージからきているというのは有名な話である。



店内左側には数々の昔ながらの駄菓子が瓶の中に収められている。コンビニでも駄菓子は販売されているが、ずらりと並べられた駄菓子の瓶にはそれなりの味わい深さがある。

駄菓子はもちろんのこと、それと同じ数だけのおもちゃも陳列してあった。





男の子が目をギラつかせる恐竜やバイクのおもちゃに女の子が心をときめかせるアクセサリー類。レトロなおもちゃばかりかと思えば、流行りのハンドスピナーまで売られていることには驚きを隠せない。やはり子供文化の温床は駄菓子屋だということを再確認した。



今では見られない凧がふと我々の目に止まる。この直径約70cmほどの立派な凧は外国人の観光客に売れているらしい。



お店の奥でタバコを吹かしているのが悪童処の店主、東九条氏だ。何かと桁外れな経歴の持ち主で、面白いエピソードが次々と跳ね出してくる。


インタビュー悪童処店主 東九条阿洞 氏


冒頭でも説明したようにここは真夜中の駄菓子屋。 真夜中にお店を開くのは一体なぜなのだろうか。

「下北沢のどこに子供がいるんだよ」

悪童処は58年も続く駄菓子の老舗だ。当時は子供がたくさんいて、子供がいる時間に開き、いなくなった頃には閉めていたそうだ。しかし本格的に少子高齢化が到来したことによって、昼間に店を開けても子供が来なくなってしまった。そこで東九条氏は名案を思いつく。駄菓子は子供が食べるものだと誰が決めたのだろうか、大人にも需要はあるに違いないと。それを機に、現在は大人を相手にした夜の駄菓子屋へと舵をきった。

「悪童処女って、おれ焦っちゃたよ」

悪童処をオープンする際に看板が必要になり、知り合いの看板製造会社の社長に依頼したのだが、その社長が悪童そのものだった。 社長から完成したとの報告を受け、いざ確認してみるとそこには「悪童処女」の文字が。 これではポルノ雑貨屋に間違われてしまうということで、慌てて一番下のパネルを透明なガラスに張り替えてもらったという。しかしなかなかトリッキーな社長である。



「駄菓子食って腹壊した子供いねぇだろ」

東九条氏によれば、駄菓子は巷で流行っているお菓子とは一味違うらしい。 違いは3つあるという。

1つめが価格。巷のお菓子は広告費などが上乗せされ、販売価格が原価より比較的高く設定されている。その点広告費がなくても圧倒的な知名度を誇る駄菓子は、10円から買える世界一安いお菓子というわけだ。

2つ目は味。どんな駄菓子にも製作会社の表示がある。そのほとんどが小会社で、製作者の駄菓子職人が長年同じ味を守り続けているそうだ。

3つ目が安全性。駄菓子は一般的に子供がよく食べる。子供達が活発に遊べば遊ぶほど手も汚れてくるのは当然だろう。その汚れた手で駄菓子を食べるとお腹を壊したり、感染病にかかったりするかもしれない。そのことを踏まえ、駄菓子職人は子供が安全に食べられるように細心の注意に払って製造しているらしい。その安全性はWHO(世界保健機関)にも認定されているほどのお墨付きだ。



東九条氏の攻撃的な物言いにもだんだん耳が慣れてきた。一見さんは間違いなく圧倒されてしまうだろうから、東九条氏のイメージを簡単に掴んで頂きたい。

「always 三丁目の夕日の茶川って俺がモデルなんだよ」

あなたが日本人ならば映画「always三丁目の夕日」はもちろんご存知だろう。活気溢れる昭和33年の東京を舞台にした国民的大ヒット映画だ。 この映画は夕日町にある鈴木オートという自動車工場と茶川商店という駄菓子屋から形成されるコミュニティーを中心に話が進む。そして茶川商店を経営するメインキャラクター茶川竜之介のモデルが東九条氏本人でさらには、下北沢一番街付近がまさに夕日町のモデルなんだと自慢げに語る。

茶川竜之介のストーリーから東九条氏のキャラクターを想像してほしい。 子供の頃は神童と呼ばれ、東京大学を卒業した秀才。しかしこともあろうか家を継がず、小説家を目指したいと親に宣言し、家を追われた形で上京する。小説家は非常に厳しい職業で茶川は苦労と無精を重ねることになる。 それと同時に茶川商店を立ち上げ、子供の相手をしながらの仕事であった。ある日酔った勢いで居酒屋の女将から養子の淳之介を引き取ってしまうという大騒動が起こる。茶川は初めは赤の他人だと淳之介を寄せ付けもしなかったが、淳之介が茶川の連載文学作品「少年冒険団」の大ファンだったことから二人は徐々に信頼を築いていった・・・

茶川竜之介というキャラクターから少しばかりだらしなさを取り除けば、それが東九条氏だ。

そして、面白いことに茶川商店と悪童処が驚くほど似ている。駄菓子コーナーの奥に書斎があるという光景を眺めれば聖地巡礼した気分になる。

東九条氏の異質な経歴はこれだけではない。

「本当にあった怖い話の脚本書いたことあるよ」

またしても某有名テレビ番組の名が飛び出した。本当にあったかどうかはあなた次第だが、夏の風物詩とも呼べるテレビ番組の脚本を手がけ、全国のワルガキたちの肝っ玉を握り潰したことだろう。 それ以外にも実家の印刷会社を経営したり、写真や日本画のデザイナーをしたりと職種は多岐にわたる。昭和生まれとは思えないマルチワーカーぶりには感服するばかりだ。

「赤字続き、消費税のバカヤローのせいでよぉ」

国民の不満の一つとして増税が挙げられる。2019年10月から10%に上がる予定だが、そのダメージを強く受けるのは「悪童処」を含めた駄菓子屋だろう。 しかし大将は子供の小遣いで買えるのが駄菓子だと頑なで、駄菓子の値段は変えていないらしい。大人を相手にしているとはいえ、駄菓子屋の原点は忘れない。毎月赤字が出るのはそのためだ。



しかし赤字続きではどう考えても生活が厳しいので、

「競馬で稼ぐんだ」

東九条氏の主な収入源の一つが競馬。 それも競馬界では有名な予想屋で、「陽数競馬」の発案者である。陽数競馬とは東九条氏が発案した競馬予想法の一つで、約20年前に大流行したという。誰でも実践でき、かつ全てのレースに通用する最強の必勝法であったため、本人が知らないうちに雑誌やテレビ、新聞で爆発的に広がっていったそうだ。 まずは馬の年齢と体重を考える。これが予測に大きく関わってくるらしい。つまり馬も人間と同様、若い方が速いということだ。その他にも場所、距離、気温、気候など、様々な角度から試合を予想するそうで、勉強すれば必ず儲けが出るという。

「競馬で稼ぎたきゃ俺のブログみな」

これ以上のおしゃべりはよろしくないのかもしれない。詳細を知りたければ東九条氏のブログに目を通して頂きたい。 東九条氏は決してサイコロはふらない。多角的に試合を予想したブログは知る人ぞ知る金鉱脈だ。

http://blog.livedoor.jp/dagasiya63/

東九条氏のユニークな職種を伺ったところで、我々は東九条氏の私生活にも個人的に興味が湧いてきた。

「医者なんか信じねぇ」

最近は病院に通う頻度が増えたという。しかしどんな職業も商売で成り立ってる以上、医者が進めて来る処方箋も商売に過ぎないとの見解を示した。 「最近はこんな薬を入荷したんですよ」「注射も打っておきましょうか」「この処方箋も一応つけておきますね」と勧められるがままだと、たちまちのうちに治療費が跳ね上がっていくそうだ。 少子高齢化で健康に神経質な高齢患者達は、長生きのためならお金を惜しまない。そこに漬け込むのが医者という商売だと持論を述べた。

「病院抜け出してきたんだ」

ある日、急激に体調が悪くなり、集中治療室で治療を受けたそうだ。そして治療後は数日間入院するように迫られたという。初めは素直に入院を受け入れたものの、あまりの退屈に痺れを切らし、夜逃げを決行したそうだ。自分の体調は自分が一番知っているんだから、自分の気持ちに忠実に行動することが一番健康的なのだとか。

「昨日も朝まで銀座で飲んでたよ」

恩年80歳。医者からは耳にタコができるほど聞かされた夜更かし、タバコ、酒の忠告にはお構いなしだ。考え方によればそれらは良薬なのかもしれないが、さすがは昭和を体現しているかのような人物だと言わざるを得ない。

東九条氏の面白いところは、虚勢のような持論が実は全て経験を伴っていることだ。

我々は最後に、昭和を強く生き抜いてきた東九条氏にとって平成生まれの我々世代に何か思うことはあるのだろうか。いや、ない訳がない。

「どうせ安いものが好きなんだろ」

東九条氏によれば我々を含め今の日本人は安いものに目がない。安くて品質が悪いものが出回り、若者がそれにん納得していることが許せない。そんなものより、高くても品質が良いものを買おうではないかと。

「乞食な日本人と札束を持った外国人がさ」

これまた耳が痛くなるようなお言葉だ。昔の日本人は日本の高い技術力で稼いだお金で海外旅行を楽しんでいたのに、今となっては携帯で自宅にこもって安物探し。逆に外国人が札束を持って日本で豪遊するような時代になってしまった。落ちこぼれた昭和人間が作り上げた、だらしのない平成人間がはびこる今の日本に失望しているという。

「まったくバカヤローしかいねぇんだから」

今の日本に対する結論を述べた一言だ。荒唐無稽な情報に誇大広告が蔓延するネット時代。それらに翻弄され、テレビやネットの宣伝費が大半を占める格安で粗悪な有名商品を買い求める人々はまたスマホに釘付けで、じわじわと貴重な時間を削られていく。そんな日本人をゴールデンウィークを例にしたブログがあるので引用させてもらう。

混雑している、人ごみの中を好きな人は、後の言い訳が

「聞いてくれよ、大勢の人で疲れた、車も渋滞で」

「何でも高いし、店員もサービスが悪いんだ」

ゴールデンウイークとは、混雑して、高くて、サービスが悪いのだ

日本人は「いわし」のようにみんなと大勢で行動が好きなのだ

マスコミ、雑誌、テレビ、で報道すると直ぐに集まる、

その後「愚痴、悪口、不平不満」を言いながら過ごす人達だ

「悪いのは全て、自分ではなく、他人が悪い」と言い続ける

東九条氏の酷評はまるで尽きない。しかし、来る客は後を絶たず、リピーターが多いのも、彼の鋭い持論が各々プラスに働いているからだろう。我々も初めは不愉快な思いだったが、時間が経過するにつれて、何か試されているかのようにも思えてきた。お前はバカヤロー以外の何者なのか、と問いかけてきたようにも感じてきた。

しかし、あれほど世間をバカヤロー呼ばわりしていたのにもかかわらず、夢見る数少ない若者には期待しているという。その期待は「世界一になるノート」に込められている。少数派の若者の夢が書き記されたノートが「世界一になるノート」なのだ。

合わせて60冊以上にもなるこのノートには、 「ハリウッドに行く」 「ロックミュージシャンになる」 など、壮大なものからユニークなものまで様々な夢が記されている。 七夕の短冊のようなノートで、書いたからと言ってどうにかなるとは限らない。しかし現に昔、夢をノートに記した子供がハリウッドに行ったり有名なアーティストになったりしているのだとか。

「悪童処は宗教」

非常に東九条氏らしい言葉だと思った。しかしそれは決して支配的な意味ではない。そもそも宗教とは悩んでいる人々を助ける考え方の一つだと東九条氏は言う。経営に悩んでいる起業家や方向性に悩んだアーティストなど様々な悩みを抱えた人が悪童処へ訪れる。そういった方々に東九条氏は親身に相談を受けることで未来に貢献しているそうだ。悪童処が赤字続きでもお店を閉めない理由はこの為なのだ。

悪童処は宗教なのだろか、それとも願ったものが叶う最強のパワースポットなのだろうか、どちらにせよ確かに不思議な魅力があるお店に間違いはない。

「世界一になるノートに書いていきなよ」

最後に我々は世界一になるノートにコメントを残し、悪童処を後にした。



http://blog.livedoor.jp/dagasiya63

月:閉店

火:閉店

水:閉店

木:閉店

金:閉店

土:閉店

日:閉店

東京都世田谷区北沢3-34-4